今世間で非常に注目度が高いeスポーツ市場。

海外での異常な盛り上がりについていく形で、ようやく日本でもeスポーツに対して本格的に力が入り始め、これからますますeスポーツ市場が発展していくことが予想されています。

いち格ゲープレイヤーとして今までなんとなくeスポーツのことを知ったつもりでいましたが、今これだけ世間が注目している中、eスポーツ市場って実際のところどうなのか本当の意味で把握しておきたいと思いましたので、今回大阪のeスポーツイベント「SPOTAKA CUP」の開幕記念イベントに参加してきました。

eスポーツイベント「SPOTAKA CUP」とは

スポタカEX事業部が企画運営をし、「大阪の街をもっと盛り上げる」というミッションテーマに沿った、地域貢献・還元型のeスポーツ大会です。
参加選手や企業サポーターをはじめ、eスポーツを盛り上げようとする全ての方が無料で参加できる社会・地域貢献型のイベントとなっています。
今回自分も一般参加申込の枠で参加してきました。

イベント概要

会場でもらった資料です。
今回はセミナーがメインで、上記の流れでイベントが進行していきました。

浜村弘一氏による基調講演

浜村弘一氏といえば、ファミ通をはじめとしたゲーム書籍の編集に携わってきたゲーム業界ではおなじみの方で、今なおゲーム業界をけん引しているゲーム業界発信の大御所といえる偉大な方です。
現在は一般社団法人日本eスポーツ連合副会長を務めていらっしゃいます。
さて、ここからは印象に残った講演内容をご紹介していこうと思うのですが、必死にメモを取りなら聞いていたものの不十分な部分も多々ありますので、そちらについてはご容赦いただければと思います(汗)

eスポーツ市場の規模

年々規模が大きくなっており、2022年には全世界で17.9億ドルまで伸びる見込みです。
勢いのある非常に大きな市場であり、30億ドルまでは伸びるだろうとも予想されているようです。

eスポーツオーディエンス

2019年では一般ファン253万人、常連ファン201万人と予想されており、2022年ではそれぞれ347万人と297万人にまで伸びるといわれています。
eスポーツというと海外、とくに北米やEUが主流かなという印象を持たれがちですが、実はアジア・太平洋系のファンが最も多く57%を占めており、EUが16%、北米が12%、その他15%となっています。
自分も確かにeスポーツってどちらかというと北米やEUで盛んなのかなというイメージがありましたが、これは日本にとって非常によいことなのかなと。
というのも、今日本って中国や韓国からのアジア系観光客がものすごく多いじゃないですか。
そういった状況で既存の市場に加えて、日本のeスポーツ市場をきちんと確立させて成長させられれば、大きな経済活性化につながる可能性がありますね!

eスポーツ活性化への各国の動き

eスポーツ活性化に向けた各国の動きをご紹介していきます。

北米地域

米国政府が「LoL」大会をプロスポーツと認定し、選手にビザを発行することを発表しました。
つまりゲームが野球やサッカーといった日本国内でメジャーなスポーツと同等の価値になったということですね。
また、米国高等教育機関がeスポーツ奨学金を提供する動きも出てきています。
教育機関がeスポーツを大きなスキルとして認めているわけですね。
こういった積極的な動きを受けて、2018年の米国でのeスポーツ観戦者数が6,300万人に達し、NBAの2018年の年間視聴者数に並ぶぐらいeスポーツの注目度が上がっています。
さらに、米フィラデルフィアに収容人数3,500万人のeスポーツ用アリーナ「Fusion Arena」を建設し、ゲームを観戦しに大型施設へ足を運ぶ流れが確実にできています。
メディアへの取り組みも行っており、アメリカの放送局「TURNER」によってアリーナで行われているeスポーツの様子が放送されています。

欧州地域

スウェーデンの3つの高校では2015年秋のセメスターから、eスポーツの授業を体育の一環として週3時間取り入れることを決定しました。
また、ノルウェーの公立ガーネス高校では、2016年8月から体育の選択科目として「eスポーツ教育」を開始しました。
運動音痴で学生時代の体育の成績がぼろぼろだった自分にとって、この時代の変化は何てうらやましいんだと思っちゃいました(笑)
さらに、eスポーツ団体ESLと英ヨーク大学がeスポーツ産業の研究で提携し、eスポーツの授業を受講した生徒には学位が与えられます。
ロシア政府のeスポーツに対する動きもあり、2016年6月にスポーツ省よりeスポーツが正式にスポーツとして認定されました。

アジア地域

韓国の中央大学校では、これまでに野球・サッカーなどのスポーツを対象に試験を行ってきましたが、体育系学部の入学試験にeスポーツを追加しました。
試験は実技・実績の両方が考慮され、過去の大会で優秀な成績を収めている必要があります。
また、小学生のなりたい職業に「プロゲーマー」が2017年が8位、2018年には9位に入っており、15歳から29歳の年齢層が好むスポーツにはサッカー、野球に次いで3番目の人気を誇っています。
政府および行政機関の支援も活発で、1999年に文化観光体育部の後援を受けて韓国eスポーツ協会(KeSPA)が発足しました。
2004年にはeスポーツの発展を目指す中長期ビジョンを発表し、2010年にはeスポーツの振興に関する法律を制定、2016年にはソウル市と文化観光体育部が共同で「ソウルeスタジアム」を建設。
eスポーツを文化として奨励し、ゲーム自体のイメージを良くする活動なども行っているようです。
メディアへの取り組みも積極的で、eスポーツ専用テレビ局「OGN」がアリーナで行われているeスポーツの様子を24時間放送しており、eスポーツの普及と活性化に取り組んでいます。

中国でも国全体でeスポーツ活性化に取り組んでおり、中国政府は2016年にeスポーツ産業の発展に向け、「普通高等学校高等職業教育(専科)専攻リスト」の増補リストで。「eスポーツと管理」を追加するなど複数の支援策を打ち出しました。
また、中国の会社であるTencentは、2017年6月から今後5年以内にeスポーツ産業を1000億元の規模まで拡大させるために事業を展開していくことを発表しました。
中国ではすでに競技人口が3億人前後ともいわれ、国家事業として選手育成も検討されています。
また、eスポーツの専門学校なども中国各地で次々と誕生しています。
一方で、ナイキがLoLの中国リーグ「League of Legends Pro League(LPL)」と提携してオフィシャルアパレル・フットウェアパートナーになり、同プロリーグ所属の全16チームにユニフォームとフットウェアを提供する予定のようです。
また、日経企業を含め世界的な40以上の企業・団体が協力して香港にeスポーツ専用施設を設営。
内装費に3000万香港ドル、広さは約2万5000平方フィートとeスポーツの会場としてはアジア最大級の広さを持ち、年間100以上のイベントを開催し120万人の来場者を見込んでいるようです。

ASEANでもeスポーツへの支援が実現し、2015年12月にASEAN7か国のeスポーツ協会が連携し、ASEAN Confederation of Esports(ACES)が発足しました。
フィリピン政府は2017年7月19日から、トップeスポーツ選手について他のプロスポーツと同様に、国代表として法的に認知される「Athlete License」を発行しています。

どうでしょうか。何がeスポーツだ、ゲームなんて単なる遊びだろと思っていた方もだんだんとeスポーツのすごさがわかってきたのではないでしょうか(笑)

世界の主なeスポーツ賞金大会

どれも非常に高額な賞金となっていますね!
現状格闘ゲームは賞金の面からみてもまだまだこれからという感じではありますが、今後ますます注目されていくと思われます。

日本でのeスポーツの動き

日本も各国に負けじとeスポーツ活性化に向けて急速な動きを見せています。

JeSUが始動

2018年1月22日に一般社団法人 日本eスポーツ連合(Japan esports Union:略称JeSU)が設立し、2月1日より活動を開始しました。
既存のeスポーツ3団体である日本eスポーツ協会(JeSPA)、e-sports促進機構、日本eスポーツ連盟(JeSF)を統合した統一団体で、IP(intellectual property:知的財産)ホルダーのCESAやJOGA、AMDの協力も得ています。

関連法令への対応

日本ではまだeスポーツ活性化に際して解決しなければならない法律の課題が残っています。
主に下記3つの法律です。

  1. 景表法(不当景品類および不当表示防止法)
  2. 風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)
  3. 刑法(賭博および富くじに関する罪)

1に関しては、自社の販売するゲームに高額な賞金をつけて大会を行うことは違法とされ、ここが日本国内の大会で大きな賞金を出せないネックの部分となっています。
なお、第三者がスポンサーとなって高額な賞金を援助してもらうことは問題ありません。
2に関しては、日本各地にあるゲームセンターがもれなくこの法律の規制対象であるのと同様、eスポーツ施設やゲームカフェなどもゲームをお客に遊戯させる営業ということで許可取得が必要になってくるというものです。
3に関しては、参加者から参加費を徴収して賞金つきの大会を開催することに違法性が問われるというものです。
しかし、それらの法律的な課題に立ち向かうために業界もしっかりと動いています。

プロライセンス制度

あらゆる状況下でも景表法に抵触しない、絶対的にホワイトなライセンス制度の立ち上げを目指し、
JeSUプロライセンス制度が出来上がりました。

  • eスポーツタイトル認定制度
    どのようなゲームがeスポーツなのか、審査をして認定
  • プロライセンス制度
    どのくらいのパフォーマンスを発揮できるものが優れた技術を持つ者なのかを規定
  • 公認eスポーツ大会認定制度
    予選と大会の建て付けなど、興業大会を法的に問題のないように規定

プロライセンス制度を使わなくても賞金付き大会を開くことはできますが、IPホルダーが賞金付き大会を開催する際に、景表法など様々な観点から違法性がなく、極めて透明性が高い賞金付きeスポーツ大会をわかりやすく線引きできるような規定をし、eスポーツの活性化への動きを進めています。

ライセンスの持つメリット

JeSUの発行するプロライセンスはeスポーツタイトルを開発するIPホルダーが公認する信頼性の高いもので、選手はこのライセンスを保持することでIESFやAESFのような国際団体の主催する大会へ「日本代表」として出場する権利を有し、JeSU公認大会で安心して賞金を得る権利が保障されます。
また、メディアやスポンサー企業から見ても「誰がプロeスポーツ選手か」がわかりやすいので、選手に対して興味を持ってもらえたり支援を受けられるチャンスが広がるというメリットがあります。
なお、JeSUの選手データベースが4月よりグランドオープンしており、プロライセンスを保有する選手の所属チーム・実績・県などをデータベース検索することができるので、eスポーツに興味のある企業と選手をマッチングさせるような仕組みも整いつつあります。

ちなみに、現在のJeSUライセンス認定タイトルと賞金総額は下記のとおりです。

最新格闘ゲームであるストリートファイター5や鉄拳をはじめ、パズルゲームであるぷよぷよも入っていますし、スポーツゲームであるウイニングイレブンもありますね。
また、スマホゲームであるパズドラやモンスターストライクも含まれています。

eスポーツの都道府県ごとの展開

各都道府県でのeスポーツへの取り組みもどんどん出てきています。
福岡では2019年2月にEVO Japan 2019が開催され、自分もその中でアニメ「ハイスコアガール」の組手イベントに演者として参加させていただきました。
また、新しい流れとして国体にeスポーツを取り入れようとする動きが各地で出てきており、2019年では茨城国体でeスポーツ大会が実際に開催されていて現在進行中です。

このように、日本においても様々なeスポーツの取り組みが出てきており、国内eスポーツ認知度は2019年1月時点で48%にまでのぼっています。
また、ゲームというと男性がやるものだというイメージが強いかと思いますが、国内eスポーツ認知者の男女比率は男性58.5%で女性41.5%とそこまで大きな差はなく、男女問わず認知されています。
日本eスポーツ市場規模の項目別割合では、現在はスポンサーが75.9%と大きく占めておりまだまだ未成熟といったところですが、放映権やアイテム課金・賞金、観戦チケット、グッズといった項目も今後どんどん伸びていくものと予想されます。
今後がますます楽しみなeスポーツ市場。自分も微力ながら何かeスポーツの活性につながることをやっていきたいですね!

エキシビジョンマッチ

エキシビジョンマッチでは日本初の格ゲープロゲーマーである「ウメハラ」氏が会場の後方から堂々と登場!
株式会社スサノオ代表取締役であり、中野サガットというプレイヤーネームで93年に国技館で行われたスト2ターボで優勝実績のある「中野貴博」氏と、CYCLOPS athlete gaming所属のプロゲーマーである「どぐら」氏の2名とストリートファイター5でエキシビジョンマッチが行われました。
会場には様々な企業・団体の方がいましたが、自分が見た感じどちらかというとゲームについてあまり詳しくないのかなという方がほとんどだったように思いました。
ただ、格闘ゲームの良さがうまく伝わっていたというか、ルールがシンプルでわかりやすく、画面上で何が起こっているかが直感的に理解しやすいところが本当によく出ていた感じで、自分は現役格ゲープレイヤーなのでもう少し深く理解できる部分もありますが、そうでなくてもものすごく熱いバトルが繰り広げられているということがなんとなく肌で感じ取れるような内容で、会場から自然と声が湧き上がるぐらい白熱したバトルでした!
ちなみに結果は両方ともウメハラ氏の勝利となり、さすがの貫禄といったところでしたね!

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、「大阪万博に向けたeスポーツの可能性~新しい地域貢献・地域活性化の形~」をテーマに6人でディスカッションが行われました。

大阪観光局の市政氏によると、平成30年の外国人観光客は1,142万人と非常に多く、アジア系の方が大多数とのこと。
大阪観光局として力を入れている分野の1つがスポーツであり、新しいeスポーツの分野ではまだツーリズムの具体的な内容は決まってはいないものの、積極的に企画を行っていきたいというお話でした。
ゲームをするために日本を訪れることがごく普通になる時代が近いうちに来るのかもしれませんね。

立命館大学教授の鐘ヶ江氏は、いわゆる文化遺産などそういったものは歴史の過程で局所的に生まれ守られてきたものだが、今のeスポーツブームは非常に大きな転換期であり、このブームが一過性にならないように地域の固有性(アイデンティティ)をこれからは自分たちで作り守っていくことが重要であると指摘。各企業がSNSやゲームなどのいわゆるサイバー空間と連動し、これに成功した都市が新たに力を持つ時代に来ていると続けました。

大阪市商店街総連盟理事長の千田氏およびアメリカ村の会 顧問の井原氏はともに、ゲームを通じて新しい集客の波ができ、地域活性に非常に有効であると述べました。続けて井原氏は、アメリカ村のみならずミナミ全体をeスポーツの町にしたい、たとえばeスポーツのプレイの様子をビジョンに映して通行人の目にとまるようにするなど、eスポーツをもっと身近な存在として普及させていきたいと話していました。
そして、アリーナのような施設についても触れ、eスポーツの甲子園と呼ばれるような場所を目指したいと熱い思いを語っておられました。

日本eスポーツ連合 副会長の浜村氏はeスポーツのビジネスチャンスに触れ、eスポーツはそれ自体アリーナのような大型施設を必ずしも必要とするものではなく小スペースでできるのでコストがそれほどかからないし、プロと一般プレイヤーとの垣根が低くプロの存在が一般的なスポーツと違って身近なもので、たとえばプロの練習に混ざって一般プレイヤーが気軽に参加できるなどの良さがあると述べました。
また、浜村氏のお話の中で個人的に一番印象に残ったことが、今eスポーツブームに乗じて様々な企業・団体が注目しているが、中核にあるのは「選手」であり、人気選手の台頭が爆発のきっかけであるということです。
選手の育成やケアについて各企業・団体は十分考えてもらいたいとプレイヤー目線を忘れずに語ってくれたことが本当にうれしかったですね!

プロeスポーツ選手の梅原氏はeスポーツについて、観客の盛り上がりが本当に大事で選手もその声に勇気づけられていると話し、そういう部分で言うとeスポーツの盛り上がりは大阪の町の特性にかみ合っていていいのではないかと述べました。
確かに大阪はノリの良い人が多く、人とのつながりを大事にするところがあるので、こういうお祭りみたいなイベントや大会開催には合っている気がしますね!

他にも様々なディスカッションが行われて大変有意義な内容でした。

今後のSPOTAKAイベントの予定

最後に、今後のイベントの予定が発表されました。

  • 2019年6月12日 大阪eスポーツ研究会
  • 2019年7月6日 第一回SPOTAKA CUP

今回自分もこのようなeスポーツのセミナーに初めて参加させていただきましたが、非常に貴重な経験をさせてもらったと思いますし大変勉強になりました。
みなさんもお時間が合えばぜひ参加されてみてはいかがでしょうか!

最後までお読みいただきありがとうございます!