2019年8月19日に第2回大阪eスポーツ研究会がなんばパークスタワーで開かれました。

これから大阪がeスポーツと関わることでどう変わっていくのかいちゲーマーとして非常に興味があるので、第1回目に引き続き参加してきました。

今回は第2回大阪eスポーツ研究会についてのレポートをお届けしていきます。

なお、第1回大阪eスポーツ研究会についてのレポートについてはこちらの記事からどうぞ。

大阪eスポーツ研究会とは

大阪eスポーツ研究会は、ミナミを中心にeスポーツで街を盛り上げようということで、スポーツ用品販売企業である「株式会社 スポーツタカハシ」が中心となり、立命館大学の鐘ヶ江教授の協力の元、eスポーツに関する勉強会の場を設けてそこからまずはやってみようということで2019年5月31日に発足しました。

大阪eスポーツ研究会の規約の主な内容について抜粋していきます。

第2条(目的)
 大阪におけるeスポーツの普及・発展に寄与するために、eスポーツに関する実践的研究を行うとともに、これらの分野にたずさわる研究者、教育者、実践者、関連機関等による研究成果の発表と相互交流を行うことを目的とする。

eスポーツの普及・発展のため、様々な人と幅広く交流を行いながらeスポーツを盛り上げようとしています。

第4条(会員)
 会員は、本会の趣旨に賛同し、本事業に協力する法人、団体および個人とする。

第5条(会費)
会費は当分の間、徴収しない。

肩書きを問わず多くの方に参加してもらいたいとの趣旨で、会費は当分とらないようです。
また、入退会も現時点では自由となっています。

ちなみに、今回の研究会の参加に際して事前申し込みフォームの中に研究会への入会希望の有無を選択する項目がありまして、個人ではありますが自分も大阪eスポーツ研究会に入会希望と選んだところ、すぐに入会が承認されて大阪eスポーツ研究会のメーリングリストに追加されました。
定期的に研究会での報告や連絡事項がまわってくるようになるので、ぜひ研究会へ入会してみてはいかがでしょうか。

第15条(運営費)
 本会の運営費は、次の収入による。
(1)協賛金
(2)寄付金
(3)補助金
(4)その他事業による収入

現状は会費を取らず、様々な企業、団体などから協賛してもらうことで運営を行っています。
SPOTAKA EXの公式HPによると、協賛企業社数は現時点で165社に及んでおり、多くの企業がeスポーツ事業に大きく注目していることがうかがえます。

講演「eスポーツを活用した大阪・ミナミの活性化」

まずはじめに、「eスポーツを活用した大阪・ミナミの活性化」についての講演が行われました。

ミナミをeスポーツのメッカにするべく大阪eスポーツ研究会が活動していることは前述のとおりです。
いわゆるお祭り的な雰囲気は大阪の地域特性に合っており、eスポーツを通じて大阪がさらに魅力ある街へと変化していく可能性に大きな期待がもたれています。

大阪を訪れる外国人旅行者の約8割が東アジア4地域(中国・韓国・台湾・香港)であり、さらに今後はインドネシアやインドなどの人口が多いアジア諸国で海外旅行ニーズが高まることが予想されます。
世界のオンラインゲーム市場においてアジア圏が最大マーケットであるため、eスポーツの街として大阪が注目されれば大きな経済効果をもたらすことが期待できます。

外国人旅行者が体験することのほとんどは買い物と食事であり、それ以外の体験を行う割合は少ないです。
また、外国人観光客は22時には宿泊施設へ戻っている割合が高く、ナイトライフカルチャーを演出するコンテンツが不足しているのが現状の課題としてあります。

アメリカではラスベガスにIR併設型(統合型リゾート)の「Hyper Esports Arena Las Vegas」がオープンしたり、eスポーツ施設「Esports Arena」が世界最大のスーパーマーケットチェーン「ウォールマート」と提携し、ショッピングセンター内にeスポーツ施設を展開しています。
また、韓国では2016年にソウル市と韓国文科省が約45億円を投資して「ソウルOGN e-STADIUM」を建設し、OGN eスポーツ専門の放送局が運営している他、香港ではアジア最大級のeスポーツゲームアリーナ「Cyber Game Arena」がオープンし、施設内にはトレーニング設備もあります。

一方、日本ではまだ規模が小さいものの新たな施設整備が進行中で、全国各地の中心市街地で空き店舗等を活用して施設が増えてきています

大阪ミナミにおいてはアメリカ村に2019年4月、国内最大級eスポーツアリーナ「ASH WINDER eSports ARENA」が登場しました。
また、今後の展望として大丸心斎橋劇場、BIG STEP、SkyOといった既存の施設をうまくeスポーツに利用していくことが検討されています。
なお、先日の記事で書いた通り、BIG STEPにてeスポーツイベント「
第1回 SPOTAKA CUP」が開催され、大きな盛り上がりを見せました。

日本におけるeスポーツの動きはまだまだこれからというところですが、地域の協力を得て様々な団体と連携しながらeスポーツイベントをどんどん行っていき、そこからミナミをeスポーツのメッカとして世界的に認められるぐらいまで成長させてるというのが大阪eスポーツ研究会の大きな目標です。

講演「韓国eスポーツの現状からみた大阪ミナミのeスポーツ事業とまちづくり」

続いて、「韓国eスポーツの現状からみた大阪ミナミのeスポーツ事業とまちづくり」についての講演が行われました。

韓国ではすでにeスポーツ分野が非常に発展しており、ソウルに「ソウルOGN e-STADIUM」が建設されています。
メイン競技場「OGN GIGA ARENA」では2つの中継ボックス、テレビおよびYoutubeで同時配信するシステムが構築されており、LOLやOVERWATCHなど多数の大会が開催されています。
また、補助競技場「facebook gaming arena」はPUBG専用競技場となっており、リーグ制の大会が行われています。
さらに、LOL専用の常設eスポーツ競技場「LOL PARK」や、ゲーム会社NEXONによる常設eスポーツアリーナ「NEXON ARENA」も存在します。

韓国と比較して大きく遅れを取っている日本のeスポーツ分野ですが、日本でeスポーツが流行らなかった理由として、日本では既存のコンソールゲームに慣れており、PCゲームがまだそれほど認知されていないことや、法律的な問題が解決されていない点が挙げられます。

日本はかつてはアメリカと並んで2大ゲーム強国と言われていましたが、eスポーツに関しては大きく遅れているのが現状で、1人だけであったり家族・友達といった閉鎖された環境で行うゲームから、不特定多数とコミュニケーションを取りながら行うゲームに転換したことに対しての認識や、そういった新しいものに対する挑戦が不足しているという課題があります。ここは文化の違いが大きく出てしまっているところで、海外プレイヤーはプレイヤー同士会話をしながらプレイすることに慣れているのに対し、日本のプレイヤーは黙々と1人でプレイする傾向にあるというのは個人的にかなり納得してしまうところがあります。

日本はコンソールやモバイルゲームに強みを持っており、世界におけるゲームマーケットの実態を見ても高い収益を上げていますが、現状はPCゲームがeスポーツの主流となっており、最近でこそ「ストリートファイター5」「スマッシュブラザース」「鉄拳」といった格闘ゲームがeスポーツに取り上げられるようになったものの、世界的には「LOL」をはじめとしたPCゲームの方が圧倒的に認知されているのが現実です。

日本ではアーケードゲーム(ゲームセンター)の文化が根強く、格闘ゲームのレベルは非常に高いです。
格闘ゲームの代表作といえるストリートファイターシリーズの成績を見てみると、韓国の有力選手がいる中で日本の選手が格闘ゲームの分野で多く結果を残していることがわかります。

日本と韓国では文化の違いや法整備の違いがあり、eスポーツの分野で韓国と同じような体系をつくるには無理があります。
そのため、日本に適したeスポーツの発展方法を考える必要があります。
個人的にはやはり格闘ゲームの強みを生かすべきだと考えており、ウメハラ氏やときど氏をはじめとした世界を代表する格闘ゲームのプロゲーマーがようやく日本国内でも一般的に認知されてきているので、日本の強みを堂々と世界に発信していけるような仕組み作りが重要であると考えています。

eスポーツの主役はやはり選手であり、選手の育成の場は今後のeスポーツ発展には欠かせないものとなります。
また、eスポーツを国内に浸透させるために、競技場などの拠点づくりを行うことや、ゲームを観てもらえる機会を増やすために専用放送局を立ち上げることも非常に有効であると考えられます。
特にゲーム放送という観点から見ると、現状はいくつかの団体や個人がYoutubeやTwitchでゲーム配信しているのみで専門性があまりなく、eスポーツ発展を積極的に促す要素にはなりきれていないと個人的に思うところがあり、ここが今後の発展において大きく影響するのではないかと考えています。
さらに、まちづくりの一環として地域との連携をはかりながらeスポーツ分野を盛り上げていくことが重要であると考えられます。

池田浩士氏と中野貴博氏によるeスポーツに関する討論会

最後に、池田浩士氏と中野貴博氏によるeスポーツに関する討論会が行われました。

両氏の簡単な紹介

池田浩士氏はエンターフォース株式会社代表取締役社長であり、2019年2月にeスポーツ専門の総合施設「eスタジアム福岡」を立ち上げました。

一方、中野貴博氏は株式会社スサノオ代表取締役であり、2019年5月に京都にeスポーツ施設「e-sports FIELD YASAKA」を立ち上げました。
また、自身も格闘ゲームプレイヤーとして活躍しており、先日アメリカのラスベガスで行われた世界最大級の対戦格闘ゲーム大会である「EVO 2019」において、サイドトーナメントの「スーパーストリートファイター2X(スパ2X)」の部門で見事優勝されました。

eスポーツ施設の必要性

eスポーツの主役はやはりプレイヤーであり、専用施設の有無は文化やコミュニティの発展に大きく影響すると述べられていました。
個人的にもeスポーツ専用施設は必要だと思っており、特に日本では現在のeスポーツの主流であるPCゲームの認知度がまだまだ低く、プレイするためにはPC本体を含めて様々なデバイスが必要となってくるため、気軽に体験できる環境が少ないと感じます。
こういった施設を通じて、PCゲームはもちろん他のゲームでも気軽にプレイできる環境が整えば、そこからコミュニティが形成されてeスポーツが定着する流れができてくるかと思われます。

なお、eスタジアム福岡における現在までの施設利用者を見てみると、男女比は男性8割の女性2割で、年齢別で見ると13歳~19歳のT層が4割で20歳~34歳のM1層が4割とこの2つの層がメインとなっているとのことでした。
また、外国人の利用者もあるとのことです。

一方、e-sports FIELD YASAKAを運営する中野氏によると、地元の高校の部活でeスポーツ部があり、その部活生が利用しているとの興味深いお話をされていました。
学校でゲームをすることが認められる時代が来るとは思いもしなかったですね!

eスポーツ施設の具体的活用法と運営方法

池田氏はeスポーツ施設に関して、施設利用者はゲームをしに来るのはもちろんだが、より高性能なデバイスを使って大会基準に合わせた快適な環境でプレイしたいという声が多いことを指摘し、本物のデバイスを整えて快適なプレイができる環境を提供することが必要であると述べました。
これについては個人的に思うところがあり、自分もいち格闘ゲーマーとしてゲームをプレイする際に常に気にするのがプレイ環境です。
モニターやコントローラーなどの性能が低いとプレイに入力遅延(ラグ)が生じ、実力を十分発揮することができないというのはプレイヤーの間ではよく知られていることで、eスポーツ施設には志の高いプレイヤーに満足してもらうための環境づくりが求められるというわけですね。

一方、中野氏はプレイヤー目線でコミュニティの価値について触れ、eスポーツ施設はコミュニケーションを取る場として非常に有効で、同じゲームを愛する仲間を求めてeスポーツ施設を活用してもらうことに価値があることを指摘しました。
これも非常に共感できる部分であり、コミュニティに入ることで1人でプレイするよりも格段にゲームが楽しくなり、意見交換などを通じてプレイヤーレベルも急速に上がりやすいという大きなメリットがあるので、そういったコミュニティ形成のためのバックアップをしていくことが必要といえますね。

eスポーツ施設にまつわるビジネスの構想

池田氏はeスポーツ施設にまつわるビジネスについて、日本のeスポーツ分野はまだまだこれからであり、施設利用料だけではすぐに大きく利益は上がらないと言及。
その中で、メディアの観点でeスポーツビジネスをとらえることが有効であることを指摘し、ゲーム配信権を売買することがビジネスモデルとして大きな可能性を秘めている述べました。

一方、両氏が指摘したことが地域の活性化と雇用の創出です。
eスポーツを通じて地域の活性化をはかるとともに、eスポーツの施設が増えればeスポーツにまつわる仕事が増えると述べ、eスポーツが持つ経済発展の可能性について大きな期待を寄せていました。

今後の予定

第3回大阪eスポーツ研究会は10月に行う予定であると発表され、詳細については後日改めて伝えるとのことです。

また、最後に非常に興味深いイベント告知がありました。
毎年行われている国内最大級のゲーム展示会である「東京ゲームショウ(TGS)」が今年も9月14~15日に行われるのですが・・・

9月29日に大阪なんばスカイオでTGS2019の大阪版にあたるものを開催すると告知されました!
スペース的な問題でTGSと同規模で行うことはもちろんできないのですが、自分は今までTGSに参加したことがなく、一度こういったゲーム展示会に参加してみたいと思っていたところに今回のイベント発表がありましたので、ぜひ本イベントに参加したいと考えております。
みなさまもお時間が合えばぜひ参加されてみてはいかがでしょうか!

最後までお読みいただきありがとうございます!